彼は何を夢見ているのか。
(続き)
遥かな道を辿る人
乾ききった大地の上を
砂塵に翻弄されながら足許ばかり見詰めていた時も
海辺の町や
湖の畔の小さな村で過ごした夜も
彼は遠くからの静かな声を聞いていた
それは青い空をゆく鳥の鳴き声でもあるし
風の吹き渡る草原の
葉擦れの音でもあったのだろうが
そのいずれとも どこかで違っていた
長い道のりを歩いてきたにしては
汗や埃の匂いがしない
彼の側に来た だれしもが
懐かしい記憶を甦らせるのは
異国の果実と香しい精油の為なのか
何度も口ずさんでいたはずの古い詩編
潰え去った夢の数々
いつとはなしに忘れてしまっていたものたち
少女のかんばせ…
目を瞑った彼の横顔に
穏やかな海原の広がるさまを私は思い描いていた
( 付録 開封と点検の様子をスライドで )
一目惚れした美しい青年のヒトガタ
北海道から無事に到着。
Singh という名で呼ぶことにした。