(続き)
朝の内、少雨。後、晴れ。
暗い部屋の中の、それでも明るい一角に人形を置いてみて
光の当たり具合を確かめる。
表情の移り変わる様子を画像に残しながら
遠藤賢司の若き日の歌声
_まるで小さな猫みたい_
そんな微かな囁きを思い返していた。
話し合えば、
議論を深めればお互い分かりあえる
そんなことを言う人に限って
相手を言い負かしてやろうとか
白黒決着をつけてやろうと考えているのではないかな。
話し合って、議論を深めて
分かるのは、お互いの立場の違い
感じ方考え方の違い
あなたとわたしは別個の人間であるということ。
その理解がなければ
ただ単に
自分の考えを押し付けたり
同じ考え方になるまで言い募る
今の世の中のようになるのだろう。
どんなに可愛がっていても
私の思い通りにはならないから
猫が好きだ。
同じ部屋にいるけれど
澄んだ瞳で何を見つめ
どんな夢を見ているのか。
それが分からないから
掛け替えが無くて
堪らなく愛おしい。
この人形もいつもどおり
いろんな表情を見せてくれた。
最後は畳み終えたばかりの洗濯物の籠の側。
少しばかり寂しそうな表情で
何かを見ていた。