(続き)
無人駅・洲先を出て、武庫川縁へ降りている。
ここは河川敷があるだけだと記憶していたのだが、緑の木陰が少なからず続いていた。
吹き抜ける風は相変わらず心地良い。
しかし、その風は、眩しい光と一緒になると、撮影には不向きであることが分かった。髪を乱すだけではなく、カメラを見詰め返す瞳を乾燥させる。
何だか、とても悲しげですね。
カメラモニターで画像を確認するついでに、そんなことを尋ねた。
何故でしょうね。
答えは、美しい人の側に在るのではなく、私の方に在る_ということなのだろう。
洲先駅の向こうには、嘗て川西航空機という一大軍需工場があり、その為に、辺り一帯、徹底的な爆撃を受けている。
戦後は米軍が接収する地域となった。
街並みは変わっていても、川の流れや海の広がりは変わっていないのではないか。この真っ直ぐに続く土手道も、電車の運行が再開されるまで、多くの人が歩いたのだろう。
だから、ここへ来るときには青空を見たいと考える。
青空の下には美しい人が立っていて欲しい。
こんな感じで、憧れのポートレートが遠くなる。
目の前の武庫川を潮が遡るのが見えた。
この辺りは汽水域だったのか_そんなことまで考える始末だった。
Zachary Bruno
ever
https://soundcloud.com/zacharybrunomusic/ever