One floor down
ターミナルビルの2階へ。
(続き)
chairhouse
A Piece Of Antique Metal Work - #2854 By Chair House 10072021
https://soundcloud.com/chairhouse/a-piece-of-antique-metal-work-2854-by-chair-house-10072021
立派な建物だが、40年前は無かった。見回すと、見覚えのある屋上施設が少し山側に。しかし、そこへ続く通路や階段は閉ざされていた。古いビルの屋上だから、現在の耐震基準には合致しないのだろうか。
あのポートピア博は、東日本や阪神淡路の震災の遥か向こう、一地方都市神戸のハレの期間だった。
あちらこちらの赤錆が急に目立ち始める。
海の近くにあるものは、潮風にやられて経年劣化しやすい。真っ白な船も、近くに寄って見れば、ペンキを何度も塗り重ねているのが分かる。それでも、どこかには赤い錆が浮いていて、そのまま放置すれば腐食が進んでいく。
海は訪れて眺めるだけなら美しいが、そばで暮らすには余りにもやっかいな存在だ。
マンション管理の業者が、ふと口にした言葉を思い出す。
しかし、青い空や青い海を背景とする赤錆は美しい。指や掌に付着する酸化した鉄の粉は滅びの先触れ。禍々しさの見え隠れする美しさ_なのだけれど。
完璧や永遠を求めすぎるのは、人として一種の病。時間は等しく過ぎて行き、何もかも古びてしまう。美しい記憶は捨てがたいのだが、変化を受け入れる心を持つ方が毎日の生活は穏やかだ。
移り変わり消えていくものだからこそ、その時その時が何ものにも代えがたい。
この人の、心をどこかに置いてきたような表情と、その後に覗く微かな笑み、澄んだ瞳。
美しいものを見ていた。