部分月蝕の日に
(続き)
Ashot Danielyan
The girl in the window
https://soundcloud.com/ashot-danielyan/ashot-danielyan-the-girl-in?in=ashot-danielyan/sets/intimate-piano-movements
同じ道を毎朝ジョギングしている。その中程の緩やかな下り坂で、今朝は橙色の大きな月を見た。まるで月に向かって走っているかのようだった。
ふと、静かの海は、あの辺りだったかなと考えた。
アポロ11号月着陸船の様子を伝えるテレビの狂騒には、当時、ただ呆れるばかりだった。
私は月には行かないし、美しい塔で有名な、或る寺へも行くことはないと考えた。そしてそのまま、この歳になった。月どころか、日本国内であっても、google map や street view を眺めるばかり。残り時間がどれだけあるのか知らないが、猫がいることを理由にして、多分、何処へも行かないで終わる。
月が辛うじて人の住める場所で、月が生まれ故郷であるなら_と今朝は考えた。
私は月で暮らすだろう。青い地球が地平線に上るのを見ながら、玄武岩の海をただ一人で歩く。
私は地球には行かないと思いながら。
月を眺めながら、私が見ているのは果たして何であるのか分からなくなった。
光なのか翳なのか。