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Small flowers by the roadside (_itokanasikimonotachi_)

A rainy day in December -Ⅲ-

51th Floor

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(続き)

Bruno Rodenbach
Triste
https://soundcloud.com/brunorodenbach/triste

誰もいない廊下の様子に惹かれて撮り始める。場所を支配する鈍い黄金色が、この人の髪の色と符合していた。
華やかな雰囲気になるはずなのに、悲しさで一杯になった。
しかし、悲しい_と声に出してみる人は少ないだろう。本当は、そうすれば心が軽くなるのだろうけれど、それを聞かされた者は反応に困る。晩年の母は、荷物を残したままだった古い家の近くを車で通るたびに、窓の外に向かって、悲しい_と呟いていたが。

 

五つの赤い風船の歌で今でも繰り返し聴いている「私は地の果てまで」。解散前の1972年の曲だから、50年近く前になる。その間、私の好みはあれこれと移り変わり、半分忘れたように生きていたときもあるのだけれど、「私は逃げる地の果てまで」というフレーズが折に触れて甦る。あの節回しと一緒に藤原秀子の声も。
苦しいからって逃げないでいるのは
あなただけなのでしょうか

今日は最初の部分を「悲しいからって」に変えて、口遊みたくなっていた。

 

地上51階の華やかなフロアなのだが、其処此処に不思議な荒廃の跡が見える。
壁を蔽う白い紙。その上から重ね張りされたJRのポスター。粘着テープを剥がした跡が幾つも残る金属の扉。ポリエチレンの養生シートで目隠しされたガラス窓……。


私も、遠い場所まで一人で行って、悲しい_と声にしてみたくなっていた。

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