Scene 002 : The blouse with puff sleeves and back bow
(続き)
書影は Ian Fleming:The Spy Who Loved Me __Penguin Books_2008
Jacket illustration:Michael Gillette_http://michaelgillette.com/james-bond-book-covers
後ろ襟から覗いていたリボン。上着を取って見せてもらった。
ダークスーツの下のブラウスはパフスリーブにバックリボン。サテン生地なのだろうか、光沢のあるスモーキーな色合い。Mauve という語が浮かんだが、調べてみると、紫に近いものからピンクに近いものまで。これが Mauve と呼べるのか判然としない。ただ、室内には似たような色調のものが幾つか。図らずも色彩の統一が為されていた。
一つ括りの髪とバックリボンの統一感も魅力的だが、パフスリーブに心が踊った。
高校の標準服について話したのは、この辺りからか。nonu さんの出身校も、制服ではなく標準服。式日は標準服着用と決まっていて、それ以外は、標準服に少しばかりのアレンジを加えていたそうだ。
私のところも同様の規定だった筈だが、平日、完全に私服の者もいた。式日でも私服で来て、体育科教師に取り囲まれる者も……。しかし、強制的に着替えさせることはなかった。学生運動の時代は過ぎていたが、それでも未だ余韻が残っていた。
私自身は詰襟の学生服で通した。皆と同じような私服が欲しかったのだが、それを買う一切の小遣いが許されなかったし、アルバイトに出ることも難しかった。いつでも学生服の私は、傍から見れば、堅苦しいヤツと映っただろう。ろくに人と話をせず、付いていけない授業が余りにも多い、目立たないヤツだった。
それでも毎日、美しい人を眺めていた。
紺サージのスカートにベスト。ベストが必要なら長袖の筈だが、女子の多くは出来るだけ長い期間、半袖・ベストで過ごしていた。今でも思い出す美しい人は青い半袖のブラウス。淡いピンクの時もあった。独特の膨らみのある袖をパフスリーブと呼ぶのは、その時に覚えた。
あんなに美しい人も70が近い。遠い記憶は薄れたり鮮やかになったりして、過ぎていくのだが。
最期の日まで私はそんな幻を追いかけている。