Photo3_dArKred

Small flowers by the roadside (_itokanasikimonotachi_)

遥かに波の音がした

(続き)

Classical Glass
Seeking Solace (A Tribute to Radiohead)
https://soundcloud.com/classicalglass-1/seeking-solace

ひとすまぬふわのせきやのいたびさしあれにしのちはただあきのかぜ

撮影しながら口を衝いて出た。
誰の歌だったか調べてみたら藤原良経。高校3年生の時、塚本邦雄解説の新古今和歌集が好きだった。
しかし季節も何も今日の撮影とは無関係。強いて言えば、吹き抜けていく風を考えていたからか。
同じように脈絡なく、アンドリューワイエスの描く海辺の小屋も、頭の中にあった。
その絵を手持ちの画集で探したのだが見つからない。たまたまネットで目にしたのを、勝手に海辺の小屋だと考えたのかもしれない。緑が疎らに残る砂地の丘と、その麓に埋もれるように傾いた板張りの小屋。あちらこちらペンキが剥がれ落ちていた。
ペンシルベニアの雪の丘で踊る人たちの絵も頭の中にあった。私は絵の中のビル・ローバー。鈎爪の義手をヘルガに握ってもらい輪の中に混じる。ここでもやはり風が吹き抜けていく。
そして風の音には、遠い海鳴りが混じっていた。

 

撮影しながら、どこか遠くの別の人生を考えていた。