残された椅子
（続き）
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スタジアムへ向かう途中、もう一度、旧亀岡商工会館に立ち寄る。
裏側の大きな木を眺めに行った。
立札は、風雨に曝され、文字が読み辛い。それでも、亀岡の名木 保津橋西袂のサイカチ＿とある。
〈調査日 一九九五年五月二十二日〉というのも、阪神淡路の震災の年であったため、いろんなことが思い出された。
廃墟と記したが、入口近くの一室には、灯りが灯っていた。扉は施錠されていたたため、中へ入って案内を請うことは叶わなかったが。
正面に比べ、裏側は荒廃が進んでいた。
錆びた螺旋階段と巨木を眺めただけでも十分だったが、カウンターチェア一脚、野晒しになっていた光景は、この先々、折に触れて思い出すだろう。
誰が座るのだろうか？
陽の光を浴びて、或いは月の光、満天の星空を見上げて。
スマートフォンを構えて歩き回る nonu さんの表情が、ここでもまた美しかった。
