(続き)
白い美しい人の胸に…
トラス構造で支えられた屋根の下
ターミナル駅のベンチにへたり込んでいるわたし
傷の目立つバーカウンターの上には
飲み残したロックグラス
真っ白に乾いたグランドを
スタンドの中ほど辺りから見下ろしていた
夏服になってから暫く続いた雨の日
濃厚な湿度の底に薄暗い廊下はあって
歩いて来た人の肩がなんだか寒々としていた
真っ赤な薔薇の花束は
静寂の火星の曠野に
置いていこう
あの美しい人の白い胸にも
真っ赤な薔薇の花束を