私の踊り子よ
友部正人の掠れた声と切れ切れのメロディーを思い出して、上の独り言に重ね合わせていた。
(続き)
彼の歌(大部分は語りなのだが)に登場する「私の踊り子」は赤い衣装。ジーナ・ロロブリジーダを凌ぐというすらりとした異国の娘。今日の未玲【CURE】とは何もかもが違っている。しかし爪先立ちで静止する少女の姿を思い描いての撮影終了後、私の踊り子よ_と呟いていた。
夕暮れの散歩道の途中に大きな家がある。そろそろ灯りが点く頃合いになっても全ての窓は暗いまま。見回してみると、敷地面積が普通の倍近くの家が立ち並ぶその辺り一帯が闇の中にあった。
誰も住んでいない家ばかりなのか。そう考えると、人の代わりに家の中に集うものたちへ、思いが向かう。猫や魚に変わる種族なら、有名な怪奇小説だが、最近の私はホラー・ムービーが苦手だ。
人間ではないものたちが、わざわざ人間なんぞと関わりたくないだろう。
人がいなくなった場所に集まるものたちは、ただ静かに其処にいて、時の流れに身を委ねたいだけ。
そんな想いに続けて、無人の家の窓辺で爪先立つ少女の幻を夢見ていた。
重力から開放されたかのような姿に心惹かれる。トウシューズの中で酷使された趾から目を反らしていることは承知の上で。
Ashot Danielyan - Shadows
https://soundcloud.com/ashot-danielyan/ashot-danielyan-shadows?in=ashot-danielyan/sets/intimate-piano-movements