Listening to the faraway cry
(続き)
Ashot Danielyan - Soulful
https://soundcloud.com/ashot-danielyan/ashot-danielyan-soulful
この日の最後に撮影したシリーズ。
今日、本当に撮りたかったのは、こんな感じのものだったのではないか。家で人形を撮っているときも、出かけて行って美しい人を撮っているときも、最後になって、そんなことを思う。
撮るためのアイデアは幾つか用意していて、それに従って撮影時間は過ぎて行く。そろそろ切り上げようかというころには、ある程度の達成感なり満ち足りた気分はあるものの、単に調子に乗っていただけではないのか_冷めた心が芽生えてくる。
ATC 内で撮影が許されないことは知っている。それでも駅へ向かう最後の所、黄色い柱際なら_と考えて、カメラを構えた。連射モードで約40枚。時間にして3分行ったか行かないか。しかしすぐに警備の人が、やって来た。
商業撮影については申請書があるのを知っている。個人的なスナップ撮影については探しても見つからない。だが、商業施設内であるから、その管理者が許可しないと言うのであれば従う他はない。撮影したことはないのだが、中崎町での撮影についての苦言を読んだことを思い出す。ショーウィンドウや企業ロゴの入ったポスター等を撮っていなくても、通る人がいないのを見計らってカメラを構えていたにせよ、私の好きな荒涼とした空間は、紛れもない商業施設の一角なのだ。
予報に反して、夕方近くになっても雨は降り続いていた。
駅で時間を確認した後、雨が吹き込む通路へ出た。手摺の壁面、曇った樹脂パネルの向こう側は、何かの建物なのだが、私には大きな船がいるように思えた。灰色のコンテナを満載した大きな青い船が。
父の現役時代は、貨物船とタンカーと鉱物運搬船があったのみ。最初の二つには、家族特権で内航の旅に便乗した思い出がある。しかしコンテナ船は、建造が漸く始まったばかりだった。
生きていたころは殆ど話すことがなかったが、今は聞いてみたいことが幾つか……。
青い船の幻を背にして、美しい人は耳を澄ましているように見える。
海を渡る遥かな叫び声を想った。