File007:文学部紅葉
(続き)
Classical Guitar Music
Prelude for Lute No.999 ~ J.S. Bach
https://soundcloud.com/classicalgm/prelude-for-lute-no-999
駅へ戻る前に、もう一度、文学部棟へ寄った。
様々な所を巡ってみたが、一度では回り切れない。春や夏など、別の光でも見てみたい。
最後はやはり馴染み深い佇まいを目に収めることにした。建物裏の小さな庭から、嘗て文学部別館と呼ばれていた講義棟の方へ向かう。
緑に赤。光と翳。
今日一番の美しさだと思った。
南天の実に指を伸ばし、紅葉した小枝に頬を寄せる。傾いた陽射しに手を翳す様子など、今見ているのが現実のものとは思えない。古い物語や文語定型詩、或いは切れ切れの夢や夢想の一場面とする方が寧ろ違和感がない。
いつもと同じ脆弱な夢だったとしても、なにもかもうんざりだ_という鬱屈を伴わない美しさだった。
振り返ってみた時計台。光を浴びた甲山の頂き。こちらを見詰める美しい人。
卒業して40年以上過ぎてから目にした景色。
若い日の私に教えてやりたい。