黒い箱の赤い紐
(続き)
A P HH O N E
DRÖM - A P HH O N E 4/4
https://soundcloud.com/aphhone/drom-a-p-hh-o-n-e-44
一日の大半を、この部屋で過ごしている。
東と南の全ての窓を布で蔽っているから、天井の灯りを点けなければ、昼日中でも暗いままだ。それでも布の端から午前の光が入ってくる。ふと、惹かれるものがあり、人形と一緒に残しておきたくなった。
積み上げた箱の上に立たせるなら、いつもどおり、この人形しかいない。38cmのビスクドールを用意した。
赤い紐の黒い箱は、Geneviève が入っていたSAKURA(@SAC_XXXX)さん特製のもの。便宜上「箱」としたが、蓋に当るものは存在しない。赤い紐は箱の底部分から何本も出ていて、首や手足、胴体等を固定していた。緩衝材を取り除き、結び目を一つ一つ解いていって、作品 "No.36" _ Geneviève を取り出した。
赤い紐を解くことに何らかの意味を持たせているのではないか_そんなことを考えていたのを今になって思い出す。
撮影しながら、人形が覗いている布の向こうに、誰もいない明るい広場があると夢想した。まるでジョルジョ・デ・キリコの絵に出てくるような。
長く伸びた影ばかり目立つあの広場は、明るくて鮮やかな色彩に満ちていても、黄昏が近いのだろう。
誰もいない静かな広場など現実には存在しない。
しかし、行ってみたいと思うと、泣きたくなるほどだった。