Photo3_dArKred

Small flowers by the roadside (_itokanasikimonotachi_)

Girls are fragile beings. ONE

(続き)

Classical Glass
Where the Truth Lies
https://soundcloud.com/classicalglass-1/a-stranger-in-our-midst

この日、家には私と猫がいるだけ。天気は悪くはなく、等身大ドールを撮影することにした。
何のアイデアもなく準備を始めたため、迷走の記録でしかないのだが、私にとってヒトガタは忘れていた時間の依り代だと分かった。
このスライドはAMと題したファイルから。
最後は、昼下がりの光を狙うために一旦休憩、昼食を食べながら見ていた画像となる。
まるでお腹が痛いみたいだな。_人形を見て思った。
何故、そんな姿勢にして放置したのか思い出せない。
泣き顔や不幸せそうに見える画像は、たとえ人形でも見たくはない。
しかし、これはどう見ても腹痛に苦しんでいる姿だ。
ふと、体調不良の娘を学校まで迎えに行ったのを、思い出した。
小学校の低学年。嘘みたいだが、30年くらい前のことだ。

ご自宅に電話しましたがお留守だったので、お父さんの勤め先へ連絡しました_とのこと。遠足先でお腹が痛いと言い出し、昼食も吐いている。出来れば、ご家庭から病院へ連れていって欲しいというようなことも。……
4時前に着いた小学校は、誰もいなくて、驚くほど静かだった。職員室へ入って名乗ると、教頭先生が娘の担任を呼びつけた。若くて背が高くカッコいいけど頼りない_担任の先生に対しての妻の評価が頭を掠めた。
娘は誰もいない保健室のベッドで一人寝かされていた。白いシーツの端から大きく見開いた目が二つこちらを見詰めていた。まさか私が来るとは思ってもいなかったのだろう。或いは怒られると思ったのだろうか。
まだお腹痛い?病院へ行かないといけないね。
黙って頷くばかりだった。
タクシーを呼んでもらって、近くの病院へ行った。
盲腸かもしれないと心配したが、便秘。適切な処置をしていただいたあと、娘は憂いが晴れたような表情になった。
帰りがけに、今日は消化の良いものを少しだけ_とのアドバイスがあり、駅前の大きなうどん屋へ寄ることにした。
娘がうどんを食べるのを見ながら、私は何かをアテに飲んだのだろう。
小さくて、いじらしくて、涙が出そうになった。