約束の時間が終わる直前、青い花の壁紙の前で。
（続き）
病院のような白い壁が好きだ。欲を言うなら漆喰壁。土蔵のある家を見かけると足が止まる。
学生時代の夏休み、室内装飾業のアルバイトに応募したことがある。壁紙やクッションフロアを張る前の下準備と清掃。ケレンと呼ばれた。
学生の作業が済んで、愈々、職人さんの出番。壁紙を張ると合板の壁が一変した。予め何かで測っていたかのように、四隅にピッタリと納まる。驚くばかりだった。
それでも、塗り壁の方が好きだという顔をしたのを見咎めたのだろう。安っぽいけどな、汚れたら、飽きたら、張り替える。まっさらに戻る。と呟いて、こちらを見た。
青い花からロマン派という語が頭に浮かぶ。やはり学生時代の夏休み、自分はロマン派ではないと思うことがあった。感情の高まりと共に社会変革を目指したのがロマン派だと気づいたからだ。
遥か彼方への憧れはあっても、それが何かの革新に繋がるとは思えない。いつでも何かに沈み込み、どこか暗い場所で、夢のようなことを考えているのが私だと思った。
それでも今年はいろいろな変化を辿っている。一切のスポーツ中継を見なくなり、全国紙の購読も止めた。赤いロゴマークの清涼飲料水は端から飲まない。ビールは昔ながらのラガーに変えた。
ロマン派ではないから、私の些細な拘りが何かに繋がるとは思わないが、一億総懺悔などと一括りにはされたくない。
幻の青い花を想い描いている。
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